
かつて、配当要求終期の公告は、有力な営業のきっかけでした。
私が若い頃は、この公告を見て、債務者のもとへ直接足を運び、任意売却の提案を行っていました。
今では考えにくい手法かもしれませんが、肌感覚では10件に1件程度は成約につながっていた記憶があります。
そのうち、銀行の債権管理部の担当者とも関係ができ、継続的に案件をご紹介いただくようになりました。
結果として、数多くの任意売却に携わる機会を得て、売主専任での取引も増え、事業としても大きな成果につながりました。
当時の銀行担当者は、今振り返ると非常に人間味のある方でした。
現場で一緒に物件を確認しながら、コーヒーを飲み、時には雑談も交えながら進めていく。
ある案件では、どうしても引っ越しが難しいご家族のために、通常30万円程度とされる引越し費用を、50万円まで引き上げる稟議を通していただいたこともあります。
「井上さんだからですよ」と言われた一言は、今でも印象に残っています。
現在はどうでしょうか。
同じ任意売却の分野であっても、銀行の対応はより制度的で、合理的、そしてドライになっています。
かつてのような“人と人との関係性”に依存した調整は難しくなり、ルールや数値が優先される場面が増えました。
結論から言えば、
👉 「そのままでは通用しないが、視点を変えれば有効」
です。
かつてのように、公告を見て直接訪問するスタイルは、現代のコンプライアンスや社会的背景を考えると現実的ではありません。
しかし、公告が示しているものは今も変わりません。
👉 「資金的に行き詰まり、選択を迫られている人が存在する」
という事実です。
令和の営業において求められるのは、
・強引なアプローチではなく
・情報提供による気づき
・選択肢の提示
です。
任意売却という選択肢を知らないまま競売に進んでしまう方は、今も一定数存在します。
だからこそ、
👉 「知ってもらう仕組み」
が重要になります。
昔のようなやり方は通用しなくても、
そこで培った
・交渉力
・現場感覚
・当事者への理解
は、今でも十分に活きます。
むしろ現在は、情報が溢れているからこそ、
👉 “本当に現場を知っている人の言葉”
に価値があります。
・配当要求終期の公告は、今も“兆候”として有効
・ただしアプローチ方法は大きく変わった
・これからは「関係構築」ではなく「情報提供」が鍵
時代は変わっても、
「困っている人がいる」という構図は変わりません。
その方にとって、より良い選択肢を提示できる存在であること。
それが、これからの任意売却に求められる役割だと考えています。