2026年3月時点、東京23区における新築一戸建て(小規模物件)の平均価格は9,256万円。ついに9,000万円を超え、これまで以上に「誰が買えるのか」が問われる市場になりました。港区・新宿区・目黒区といったエリアの高価格帯が全体を押し上げており、現実として“簡単に手が届く価格”ではありません。
では、この価格帯の住宅を購入するには、どの程度の負担が必要になるのでしょうか。
■ 9,000万円を借りる現実
仮に9,000万円の住宅ローンを組んだ場合、必要年収はおよそ1,200万円前後。
毎月の返済額は約33.8万円(フラット35・金利2.82%想定)となります。
この数字はあくまで一例ですが、ひとつはっきりしているのは、単独年収だけで支えるには相当な負担だということです。特に建売住宅が主流の23区においては、ご主人の収入のみで成立させるのは現実的に厳しいケースが多くなっています。
■ 2馬力戦略―夫婦合算という前提
今や主流となりつつあるのが「2馬力」、つまり夫婦の収入を合算して住宅を購入する戦略です。
世帯年収としてローンを組むことで、借入可能額は大きく伸びます。ただしこれは、同時にどちらかの収入が止まった場合のリスクも抱えるということを意味します。
だからこそ、「借りられる額」ではなく「払い続けられる額」で考える視点が不可欠です。
■ 妊娠・出産・子育てという現実
2馬力戦略を考えるうえで避けて通れないのが、ライフイベントです。
出産や育児により、一時的に収入が減少する可能性は高い。ここに対する備えがなければ、計画は簡単に崩れます。
・柔軟な働き方(リモートワーク、時短勤務)
・ご主人の育休取得
・収入減少を前提とした資金計画
これらを“理想”ではなく“前提”として設計する必要があります。
■ ご主人の副業という選択肢
近年、副業を認める企業は増えています。収入源を一つに依存しないという意味でも、副業はリスク分散として有効です。
ただし、副業収入を前提にローンを組むのは危険です。あくまで「余力」として考えるべきであり、基本の返済計画は本業収入で成立させることが鉄則です。
■ 親からの援助という現実
住宅購入において、親からの資金援助は珍しいものではありません。
極端な言い方をすれば、「使えるものは使う」。これも一つの合理的な判断です。贈与の非課税枠など制度面のメリットも活用しながら、無理のない形で支援を受けることが、全体の負担軽減につながります。
■ 繰り上げ返済は“元本充当”が基本
繰り上げ返済を行う場合、重要なのは「元本充当」を選ぶことです。これにより利息の支払い総額が減り、長期的には大きなメリットを生みます。
日々の負担を軽くするか、総支払額を減らすか――この選択は戦略的に行うべきポイントです。
■ 耐えきれないときは売るという出口戦略
住宅購入で見落とされがちなのが「出口」です。
もし支払いが厳しくなった場合、売却によってローン残債を上回る価格で売れるか。この視点は、購入時から持っておくべきです。
・駅徒歩10分以内
・東南角地
・前面道路6m以上
・3SLDK以上
こうした条件は、将来の資産価値と流動性に直結します。特に「駅徒歩10分以内」は、売却時の成否を大きく左右する重要な指標です。
■ エリアを広げるという現実的選択
東京23区にこだわらず、周辺エリアに目を向けることで、選択肢は大きく広がります。
横浜、川崎、浦和、大宮、浦安、船橋――これらのエリアは、都心へのアクセスと価格のバランスが取りやすく、現実的な選択肢となります。
■ まとめ
住宅価格が高騰する中で、「ご主人の収入だけで購入できるか」という問いに対する答えは、ますます厳しくなっています。
だからこそ必要なのは、
・2馬力という前提
・ライフイベントへの備え
・出口戦略を含めた設計
家は「買うこと」がゴールではありません。
払い続けられること、そして必要なら手放せること。
この2つを満たして初めて、“現実に耐えうる住宅購入”になるのです。