
免震神話に寄りかからない。防災性能と生活継続性は別である。
「マンションは地震に強い。」
この言葉は半分正しく、半分危うい。
たしかに近年の新築マンション、とりわけタワーマンションには、免震・制震技術が投入され、高い耐震性能を有するものが多い。地盤と建物を切り離し、揺れを受け流す免震構造は、現代建築技術の一つの到達点ともいえる。
しかし、私はここであえて言いたい。
免震は万能ではない。
構造体が無事であることと、暮らしが維持できることは別問題だからだ。
地震後、停電が起こればエレベーターは止まる。
断水すれば高層階は生活機能を失う。
物流が止まれば、高層居住は一時的に「高層難民化」する可能性もある。
これは建物の倒壊リスクの話ではない。
生活継続性の話である。
ここを混同してはいけない。
一方、戸建てはどうか。
木造住宅は軽量ゆえ地震力を受けにくく、近年は耐震等級3、制震ダンパーなどにより、防災性能は大きく進化している。
特に最近の建売を、私は軽く見ていない。
構造用合板と筋交いのハイブリッド、制震装置の採用、構造計算の厳格化。
昭和の戸建てと同じ物差しで語るのは誤りである。
むしろ災害時、戸建ては地面と直結している強みがある。
水が出る。
階段で上り下りしなくてよい。
生活復旧が比較的早い。
これもまた現実。
マンションは「揺れに強い」かもしれない。
しかし、災害に強いとは限らない。
ここに違いがある。
さらに見落とされがちなのが、長周期地震動である。
超高層特有のゆっくり大きな揺れは、構造安全性とは別に居住者へ心理的不安を与える。
数字では測りにくいが、住まいとしては重要だ。
結局、耐震とは単なるスペック比較ではない。
「倒れないこと」だけでは足りない。
災害時も暮らしが続くこと。
そこまで見て、初めて防災である。
私は、住宅購入者にはここを考えてほしい。
構造性能に安心しすぎないこと。
災害時の生活まで想像すること。
住まいとは、平時だけでなく、有事を託す器でもある。
その視点を持った時、戸建てかマンションかの見え方は変わってくる。