
建築現場や内覧同行の際、こちらの指摘に対して施工側から返ってくる定番のフレーズがあります。
「あぁ、それは『仕様』ですから」
この言葉を聞いたとき、私たちはどう振る舞うべきでしょうか。「そうなのか」と納得して引き下がるのか、それともその裏にある真実を掘り下げるのか。ここに、プロのエージェントとしての真価が問われます。
施工側が「仕様です」と言うとき、そこにはいくつかの異なる意図が混在しています。
標準的な工法である: 確かに社内規定や標準図に基づいているケース。
精度の限界である: 今の職人の腕や予算では、これが限界であるという白旗。
是正が面倒である: やり直すとコストや工期がかかるため、言葉で封じ込めたいという心理。
私たちは、その言葉が**「技術的な根拠に基づいたもの」なのか、単なる「逃げ口上」**なのかを見極める必要があります。
もし「仕様です」と言われたら、建築士の視点で以下の3点を問い直してみてください。
「我が社の仕様」が、社会的な「標準」や「法規」とズレているケースは多々あります。特に断熱材の充填や構造金物の取り付けなど、見えなくなる部分での「独自仕様(という名の手抜き)」には注意が必要です。
例えば、床のわずかな傾斜を「仕様(許容範囲)」と言われた場合。それが $3/1000$ なのか、それとも構造的なリスクを孕む $6/1000$ に近いものなのか。数字という客観的指標で「仕様」の正当性を測るべきです。
たとえ社内規定通りであっても、それが原因で生活に支障が出たり、建物の寿命を縮めたりするのであれば、それは「悪い仕様」です。プロとして「仕様だから仕方ない」ではなく、「仕様であっても改善すべき点」として声を上げるべきです。
現場で「仕様です」と突き放されたとき、私たちがすべきことは論破することではありません。
「では、その仕様の根拠となる図面やマニュアルを見せていただけますか?」
と、淡々とエビデンスを求めることです。根拠が示せない「仕様」は、ただの「言い訳」に過ぎません。逆に、根拠が明確であれば、それを丁寧にお客様に説明することで、納得感と安心感を提供できます。
「仕様です」という言葉は、対話の終わりではなく、深掘りの始まりです。
新築であっても、完成品として盲信するのではなく、その「仕様」が本当にお客様の未来を守るものなのかを検証する。その粘り強さこそが、建築士の目を持つeXpエージェントに求められる誠実さではないでしょうか。
「仕様」という言葉に思考停止せず、常にその裏側にある「品質」に目を向けていきましょう。