
建設現場や内覧会で、不備を指摘した際に施工担当者から返ってくるこの言葉。 「あ、そこは後日、手直しにお伺いします。まずは引き渡しを……」
一見、誠実な約束のように聞こえるかもしれません。しかし、不動産実務において、これほど危険な言葉はありません。
今回は、なぜ「あとで」が命取りになるのか、その理由をお話しします。
不動産取引において、買主が持っている最大の武器は**「代金の支払い(決済)」**です。
引き渡し前: 施工側は「お金をもらうため」に、必死に、そして優先的に手直しに対応します。
引き渡し後: すでに全額の支払いが完了しているため、施工側にとっての優先順位は劇的に下がります。「他の現場が忙しい」「担当者が変わった」……。そんな言い訳で、対応が後回しにされるケースを、私は嫌というほど見てきました。
👉 直すなら引き渡し前。これが鉄の原則です。
引き渡しを受け、生活が始まってしまった後に指摘をすると、必ずと言っていいほど出てくるのが**「生活傷論争」**です。
「これは引越しの時についた傷ではないですか?」「住み始めてからの衝撃で歪んだのでは?」 たとえ施工時の不備であっても、一度荷物を入れてしまえば、それが最初からあったものだと証明するのは至難の業です。
内覧という「真っ白な状態」で指摘し、直させ、確認する。これを怠ることは、自ら防衛権を放棄するに等しい行為です。
[Image showing a close-up of a construction defect being marked with blue tape for repair before handover]
お客様は、エージェントを信じて決済に判を押します。 そこで私たちが「あとで直してくれるそうですよ」と中立ちしてしまい、もしその約束が反故にされたらどうなるでしょうか。お客様の怒りの矛先は、施工会社だけでなく、その言葉を信じ込ませた私たちエージェントにも向きます。
「あとで直す」という口約束を許容することは、エージェント自身の首を絞めることでもあるのです。
私たちは、単に契約を成立させるのが仕事ではありません。お客様が「何の憂いもなく、新しい生活を始められる状態」を整えるのが仕事です。
現場の「あとで」という言葉には、笑顔でこう答えましょう。 「では、その直しが完了し、確認できてから引き渡しを受けましょう」
この毅然とした態度こそが、結果的にお客様を、そしてエージェント自身の信頼を守ることになります。